隣の芝生

学校のクラスメートで仲良くなった48歳のスティーブ。生物の修士学を持ち、大学で教えた経験もある非常に教養深い人。10年間、夫婦でヨーロッパやカンボジアやミャンマーなどの国々に住み、NGO機関の代表をしていた。

彼は1年前にアメリカに帰国してから、新しい人生を歩みだすべく、医療系の仕事に就こうと、現在大学で学んでいるという。しかし、まだはっきりとは、進路を決めかねているらしい。

そのスティーブが、勉強会の途中にふと一言。
スティーブ:「僕、もし子供がいたら、人生の選択がもっと簡単だったと思う。」
私「へ?どういうこと?」
スティーブ「僕は子供がいないから、子供がいる人より人生の選択肢が広い。そしてそれが僕を苦しめている。」
私「なぜ?」
スティーブ「だって、子供がいれば、迷う暇がないじゃないか。子供を育てるために、なんでもいいからとりあえず働かないといけない。子供のために、朝早く起きるのも、ご飯を作るのも、買い物も、送り迎えも、全部、やるべきことが決まっているんだ。でも子供のいない僕には、多すぎるほどの選択肢がある。朝起きるかどうか、ご飯を作るかどうか、勉強するかどうか、全て僕次第なのだ。どんな仕事をするかどうかも。たくさんの選択肢の中から、自分で決断をするのが、しんどい時があるんだ。」

ほほー、過去に、様々な国に住み、教養と人格と経験が備わっている彼が、そんなことを考えていたとは。しかし、まさに「隣の芝生」とはこういうこと。子供のいる人が羨ましく思えるなんて。

でも彼の言っていることがわからないでもない。人間は、選択肢が増えれば増えるほど、幸福感が低くなるというデータもあるくらい。大事なのは、自分の置かれている立場や状況に、どれだけ感謝できるかということだろう。感謝から生まれる幸福感は揺るぎない。

それはそうと、かなり深刻に悩んでいるスティーブに対し、「あなたは大丈夫よ。悩みすぎないで。人間、感謝が大事よ!」なんて言っても、全く効果がないのはわかっている。私は話を聞くだけ聞いて、「その気持ちわかるわ。しんどいよね。何かあったらいつでも話聞くよ。」とだけ言っておいた。

どちらにしても、お互いの悩みを友達同士で話し合うのは、教科書から学ぶ内容よりも、格段にリアルな人生勉強なのである。

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